交通事故といわれると事故で怪我をした人を思い浮かべる方も多いでしょうが、実際には怪我そのもの以外にも多くの被害があります。事故によって入院を余儀なくされる人もいますし、働けなくなる人もいます。最悪の場合は被害者が亡くなることですが、もし一家の大黒柱が交通事故で亡くなってしまったとすると、家族の生活も危ぶまれます。
交通事故では、十分な損害賠償の請求が重要になってくるのです。
ここでは、交通事故に深くかかわる損害賠償についてご説明します。
■損害賠償の種類
交通事故における損害賠償は財産的損害と精神的損害に分けられ、財産的損害の中でも積極損害と消極損害に分けることができます。
まずは財産的損害についてみていきましょう。
①積極損害
積極損害とは、被害者が交通事故によって直接支出しなければならなくなった部分の損害を言います。
たとえば死亡事故の場合、被害者が亡くなるまでにかかった入院費や治療費や付添人費用、葬儀関係費、雑費が積極損害として挙げられます。
葬儀関係費については、葬儀そのものにかかった費用のほか、49日の法事の費用、仏壇の購入費、墓碑の建立費などが一部認められることもあり、一般的には130~170万円となっています。ただし香伝返しの費用は認められていません。
また、傷害事故の場合には同様に、治療費や入通院費、付添看護費、雑費が積極損害として挙げられます。治療費や入通院費は原則として実費相当額ですが、入院した病院の個室でない平均的室料が基準とされています。
②消極損害
消極的損害とは、交通事故がなければ被害者が得ることが出来たであろう経済的利益の損害を言います。交通事故によって消極的に利益を失ったということです。
たとえば死亡事故の場合は逸失利益と呼ばれるものが対象となります。
逸失利益とは、事故により得られなくなった死亡後に得られたであろう収入の推計です。生活費など必要経費を差し引いた額が認められます。
また、傷害事故の場合には、休業損害が消極損害として挙げられるほか、後遺障害がある場合はそれによる逸失利益も消極損害として挙げられます。
続いて、精神的損害に対する損害賠償は慰謝料と呼ばれるものです。
慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛を慰めるために支払ってもらえるお金のことです。
慰謝料の算定方法には、弁護士会基準、自賠責(強制)保険基準、任意保険基準の三つがありますが、弁護士会の基準がもっとも手厚くなっています。
詳しい慰謝料についてのご説明は別の項でも行っていますので、そちらもご参照下さい。
■自動車損害賠償保障法(自賠法)
自動車損害賠償保障法(自賠法)は、交通事故の人身事故の被害者の保護を目的に設けられた法律で、人身事故のほとんどにおいてこの法律によって損害賠償請求されています。
自動車損害賠償保障法(自賠法)の特徴は、「無過失責任主義」と「運行供用者責任」です。
「無過失責任主義」とは、故意過失がないことを加害者が立証しなければならないことです。
「運行供用者責任」とは、運転者やその使用者だけでなく運行供用者にも責任があるというものです。運行供用者については、自賠法3条には「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。」とあります。
運行供用者は自動車の所有者や自動車を他人に貸した者、従業員の自動車を雇用主が業務用に使用させている場合の雇用主などがあたります。
■被害者請求
損害賠償の請求については、加害者と被害者の双方がそれぞれの意見を述べつつ示談で解決することが一般的です。しかし、示談が長引くことで賠償金を受け取ることが出来ない場合もあります。
そういった際に活用することが出来るのが、被害者請求と呼ばれる制度です。
被害者請求とは、被害者が自賠責(強制)保険の保険会社に仮渡金や内払い金を請求することです。
本来、保険金は、加害者が払いきれないものを保険会社が負担するというものであるため、保険に加入している加害者が保険会社に請求しなければなりません。しかし、自賠責(強制)保険は被害者救済が目的であるため、被害者の側からも請求することが可能なのです。
■損害賠償請求の注意点
損害賠償請求で注意しておかなければならないことがいくつかあります。その一部をご紹介します。
①警察への届出
まず重要なのは、警察への届出を忘れてはならないということです。保険会社に保険金を請求する際には交通事故証明書が必要となりますが、交通事故証明書は事故届が出されていなければ取得することができません。
②物損事故の損害賠償請求
物損事故の損害賠償では立証責任が被害者にあります。これは、物損事故は自動車損害賠償保障法(自賠法)が適用されないからです。したがって民法による不法行為責任として損害賠償を請求していくことになるため、被害者に被害の立証責任があるのです。
また、物損事故の場合は自賠責(強制)保険が適用されません。
③会社内の同僚間の事故
会社内の同僚間で起きた事故は、任意保険が支払われません。会社には運行供用者としての賠償責任がありますが、企業内で発生した事故は労災保険で補填するべきという考えから、任意保険の約款ではこのような事故を補填対象から外しています。
損害賠償請求はその項目が多岐にわたり複雑になるため、専門的な知識と経験が必要になります。
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